【顧客理解の最先端】消費財マーケティングを深めるためのデータ活用戦略

2025.8.5

  

現代の消費財マーケティングでは、市場の飽和や消費者ニーズの多様化により、顧客理解の重要性がこれまで以上に高まっています。また、消費財マーケティングの手法は消費者の価値観の多様化に伴い、従来のマスマーケティングだけでは対応が難しくなってきており、個々の顧客にパーソナライゼーションが求められています。

顧客理解は、顧客LTVの向上やロイヤリティの強化、新規顧客獲得の効率化に不可欠です。また、デジタル化や新メディアの台頭により、顧客理解の手法も大きく進化しています。

この記事では、顧客理解を深めるための手法と具体的な施策について紹介します。

顧客理解とは何か?消費財マーケティングにおける顧客行動と心理の解明

消費財マーケティングで成果を出すためには、顧客の購買行動や心理を捉え、顧客の本質を理解することが重要になります。まずは顧客理解の定義や目的について知っておきましょう。

顧客理解の定義と目的

顧客理解とは、年齢や性別といった属性情報だけでなく、「いつ、どこで、何を、なぜ購入したのか」といった顧客の行動や心理まで深く掘り下げて把握することです。その目的は、顧客が直面している課題を解決し、購入から利用に至るまでの体験をより良いものにすることで、企業の利益向上につなげることにあります。

さらに、こうした深い理解のもとにパーソナライズされた施策や、最適なタイミングでのアプローチを実現することで顧客満足度の向上も期待されます。

従来の顧客理解手法とその限界

従来、主に用いられてきた顧客理解手法として以下の方法が挙げられます。

  • アンケート
  • グループインタビュー

これらは「調査時点での顧客の意見」などの把握には有効です。しかし、顧客が購買に至るまでの検討プロセスの潜在的な欲求、感情を深く理解するためには限界があります。

また、アンケートやインタビューは設計や実施に時間やコストがかかるのも課題の一つです。さらに質問の仕方や調査員の対応によって回答が誘導されたり、回答者が本音を話しにくくなったりなど正しいデータが取得できないリスクもあります。

消費財マーケティングで重要な顧客理解のポイント

消費財マーケティングで成果を上げるためには、顧客の購買行動や心理を多面的に捉え、購入前後の体験やブランド選択の背景まで深く理解することが大切です。

購入に至るまでの検討プロセス

消費者が商品を認知してから購入に至るまでの検討プロセスは、以下のようにいくつかの段階に分かれます。

  1. SNSや比較サイト、店舗内情報などから商品について情報収集を行う
  2. 価格や成分、口コミ、ブランドイメージなどを基準に比較する
  3. 集めた情報をもとに、最終的な購入の決断を行う

プロモーションや限定性、店員からの推奨も購買を後押しする要素の一つです。このように、消費者は複数の情報や基準をもとに段階的に意思決定を進めていきます。

購入後の利用体験

購入後の利用体験を把握することは、顧客理解を深めるうえで欠かせません。商品を実際に使った際の具体的な満足点や不満点を明らかにすることで、顧客の本音や改善ニーズを把握できます。

また、リピート購入の有無やその理由を分析することで、商品やサービスの継続利用につながる要因が特定可能です。さらに、友人や知人への口コミや推薦などの行動は、他の消費者への影響力も大きく、顧客ロイヤリティやブランドの拡散に直結します。

ブランドスイッチの要因

消費財マーケティングで重要な顧客理解のポイントは、ブランドスイッチの要因を特定することです。消費者が競合ブランドに移行する主な理由には、品質や価格、新しさ、特定の機能などの商品価値が自社ブランドよりも優れていると感じた場合が挙げられます。また、日常的な使用の中で感じた不満やサポート対応などの対応がきっかけで、他社ブランドに切り替えるケースもあります。

こうした要因を特定することにより、商品やサービスの改善ポイントを明確にし、顧客が離れるリスクを低減できます。さらに魅力的な価値提案やロイヤリティ向上策を講じることもできます。

リテールメディアが提供する顧客データの宝庫

消費財マーケティングにおける従来からの代表例として、TVCMが挙げられます。TVCMは認知を広範囲に作ることができる大変優れたメディアです。しかし、広告主にとっては効果を可視化しづらいメディアでもあります。そこで注目を集めるのがリテールメディアです。

リテールメディアとはリテーラーが持っているメディア(デジタルサイネージ、自社アプリ、店頭プリントメディアなど)に購買データを掛け合わせて広告配信を行うことができるものです。外部WEBサイトや他社アプリでの広告展開にも活用できます。アメリカでは、2025年にリテールメディアの売上がTVCMを抜くとまで言われており、市場は急成長、消費財マーケティングを深化させるためには、リテールメディアの活用が不可欠となっています。

リテールメディアとは?その概念と特徴

リテールメディアとは、リテーラーが自社で保有する顧客接点を広告・販促媒体として活用する仕組みです。顧客接点には以下が挙げられます。

  • ネットスーパー
  • 公式アプリ
  • 実店舗のデジタルサイネージ
  • レシート
  • DMなど

最大の特徴は、小売業が独自に蓄積した購買履歴やオンライン・オフラインでの行動データといったファーストパーティデータが活用できる点です。このデータ活用により、広告主であるメーカーは消費者の購買意欲が高いタイミングで効果的にアプローチできます。また、リテーラーは新たな収入源を得ることが可能です。

リテールメディアが広告手法として注目されるのはなぜ?効果と活用法を解説

リテールメディアから得られる顧客データの種類

リテールメディアでは、購買履歴やオンライン・オフラインの行動履歴など、多様で詳細な顧客データを総合的に取得・活用できる点が特徴です。リテールメディアで取得できる主なデータの種類と、その具体的な内容について見ていきましょう。

購買データ

購買データでは、SKU(最小管理単位)ごとの購入商品名、日時、数量、金額などの詳細な購入履歴の取得ができます。さらに、購入頻度や平均単価、購入金額などの指標から、顧客ごとの購買傾向の把握もできます。また、特定カテゴリの購入傾向や、「ビールとおつまみ」「シャンプーとリンス」など、併買されやすい商品の組み合わせも分析可能です。

オンラインの行動データ

オンラインの行動データでは、ネットスーパーや公式アプリ上での閲覧履歴や検索キーワード、カート投入、途中離脱のページなどのユーザー行動が取得できます。広告のクリック率やメールマガジンの開封・クリック履歴も取得でき、これらのデータをもとに顧客の興味や購買意欲をきめ細かく分析可能です。

こうした得られたオンラインの行動データは、パーソナライズされた提案やマーケティング施策に活用できます。

オフラインの行動データ

オフラインの行動データでは、実店舗での顧客の動きを詳細に把握できます。具体的には、Wi-FiやBeaconを利用し、店舗全体や特定売り場での滞在時間、来店頻度、来店時間帯などを計測します。

さらにデジタルサイネージとの連動によって、特定のエリアでどれだけの時間顧客が商品や広告の前に滞在したかといった行動履歴の取得も可能です。また、ID-POS連携によってオンラインとオフラインの購買データを顧客IDで統合し、個々の顧客単位で一元的に行動や購買履歴の分析もできます。

属性データ

属性データは、顧客の年齢、性別、居住地域、家族構成などの基本情報です。これらは法規制に基づき顧客の同意を得たうえで紐付けて活用され、マーケティング戦略やターゲット設定の基礎となります。同じ属性を持つ顧客は似た行動や選択をする傾向があるため、属性データの分析で、顧客の生活背景やニーズを把握しやすくなります。これにより、商品やサービスの最適な提案につなげることが可能です。

リテールメディアのデータを活用して発見できるインサイト例

リテールメディアのデータを組み合わせることにより、顧客の深層にあるインサイトを発見できます。下記に具体的な顧客パターンと、そこから得られるインサイトや施策例をまとめています。

顧客パターン類推されるインサイト施策事例
特定カテゴリのロイヤルユーザーであるものの、自社ブランドは購入せず他社の高価格帯商品を継続購入する顧客価格よりも品質や機能性を重視している・自社商品の価格・機能の見直し ・高価格帯志向層への訴求強化
セール品ばかりカートに入れ、定価商品は閲覧のみで購入しない顧客お得感を重視して購買行動を決定している・限定インセンティブ ・バンドル販売 ・付加価値訴求の強化
新製品情報を熱心に検索し、発売前からネットスーパーで関連ページを複数回閲覧するアーリーアダプター層新しい商品やサービスに高い関心を持っている・先行告知 ・限定プレセールの実施  
購入までに複数回サイト訪問し、常に複数の競合商品を比較検討している顧客意思決定に慎重で、納得感や根拠を重視している・製品比較表 ・FAQの充実 ・レビューの充実

このように、リテールメディアのデータを統合的に分析することで、顧客の本質的な欲求や心理を可視化できます。こうして得られたインサイトをもとに、パーソナライズ施策の質を高め、顧客ロイヤリティやビジネス成果の向上につなげることができます。

顧客理解を深めるリテールメディア活用の具体的な施策

リテールメディア活用の施策は、KPI設定からデータ統合・分析、ターゲティング施策、オムニチャネル連携まで多岐にわたります。これにより、顧客体験を最適化し、ビジネス成果の向上を実現することができます。

データ収集と分析のステップ

データ収集と分析は、以下の流れで行います。

  1. KPI設定と必要なデータの明確化
  2. DMP/CDPを活用したデータ統合と分析
  3. サイエンティストとの連携、BIツールの活用

KPI設定では、「特定商品のリピート率〇%向上」など、達成したい目標を具体的に設定し、その目標達成に必要な顧客データを特定しましょう。社内の各システムに分散している顧客データは、DMPやCDPなどのプラットフォームを活用して統合します。また、統合した顧客データは、データサイエンティストや、BIツールを活用し、膨大なデータから具体的な顧客インサイトを導き出します。

ターゲティングとパーソナライゼーション施策

顧客理解を基にしたターゲティングやパーソナライゼーション施策を実現するためには、多角的なセグメンテーションが不可欠です。以下のような切り口で顧客を分類し、それぞれに最適なアプローチを行うことが大切です。

セグメンテーション例分類基準
RFM分析最終購入日、購入頻度、購入金額に基づいて、顧客を「優良顧客」「休眠顧客」「新規顧客」などに分類
購買カテゴリ・ブランドロイヤルティ特定カテゴリの購買傾向や、自社ブランドへのロイヤリティレベルに基づいて分類
行動履歴セグメンテーションカート放置、商品ページ複数回閲覧、新製品関連キーワード検索などの行動パターンに基づいて分類

セグメントに基づいて、各グループの特性やニーズに合わせた最適なターゲティング施策やパーソナライズされたアプローチを実施します。

具体的な施策例

セグメントに基づき、さまざまな施策を展開することができます。具体的な施策例について見ていきましょう。

ターゲティング広告配信

ターゲティング広告配信は、顧客データをもとに、最適なターゲットへパーソナライズされた広告を届ける手法です。以下にターゲティングの具体例と施策例をまとめています。

ターゲティングの具体例施策例
高保湿化粧水カテゴリの購買者自社ブランドの最新高保湿美容液の広告を配信
過去6か月間、自社ブランドのシャンプーを購入していない顧客新しい香りのシャンプーに対するインセンティブ付き広告を配信
競合ブランドのサプリメントを定期購入している顧客自社サプリメントの機能性や費用対効果を比較するコンテンツを配信

顧客ごとの行動や属性に合わせて広告内容を最適化することで、広告効果やコンバージョン率の向上が期待できます。

パーソナライズされたレコメンデーション

パーソナライズされたレコメンデーションは、顧客データをもとに、一人ひとりに最適な商品を提案する仕組みです。例えば、ネットスーパーの商品詳細ページで、ユーザーの閲覧・購入履歴をもとに、関心が高いと思われる商品を個別にレコメンドします。これにより、ユーザーごとに関連性の高い商品が提示され、購買意欲やロイヤリティの向上が期待できます。

また、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」といった形で、他の顧客の購買パターンをもとに関連商品を提案するのも方法の一つです。例えば、コーヒー豆を購入した顧客にコーヒーフィルターをおすすめするなど、追加購入を促すクロスセル施策も有効です。

One to Oneコミュニケーション

One to Oneコミュニケーションは、顧客データをもとに、最適なタイミング・内容で個別に情報を届けるマーケティング手法です。例えば、コンタクトレンズの消耗品購入から一定日数後に、リマインドメールを送ることで再購入を促します。また、顧客の誕生日や母の日などのイベントに合わせて、パーソナライズされたクーポンやギフトを配信するのも効果的です。

顧客ごとに最適化された体験を提供することで、信頼関係の構築やLTV向上に大きく貢献します。

オムニチャネル連携

オムニチャネルは、オンラインとオフラインの各チャネルを統合し、一貫した顧客体験を提供する戦略です。例えば、ネットスーパーで特定の掃除用品を閲覧していた顧客が実店舗に訪れた際、店員がタブレットでその情報を確認し、店舗での商品場所や使い方を案内します。これにより、顧客はチャネルを意識せず、スムーズに商品を探すことができ、満足感の向上につながります。

また、実店舗で購入した商品データをネットスーパーに連携させることで、オンライン上でもその顧客に合わせたおすすめ商品の表示が可能です。

リテールメディアを通じた顧客体験向上

リテールメディアを活用することで、オンラインとオフラインの顧客体験をシームレスに連携させ、顧客がストレスなく商品を探して購入できる環境を実現します。さらに購買データや行動履歴をもとに、顧客の潜在ニーズや課題を予測することが可能です。これにより、最適なタイミングで解決策となる情報や商品を提案し、顧客の課題を先回りしてサポートします。

また、パーソナライズされたコミュニケーションを通じ、ブランドとのエンゲージメントを強化し、顧客ロイヤリティや満足度の向上にもつながります。

顧客理解を基にしたマーケティング戦略の立案と実行

顧客理解を深めて得られたインサイトを、マーケティング戦略に落とし込むためには、課題発見から効果測定まで一貫して行うフレームワークの活用が欠かせません。

消費財マーケティングにおける戦略立案の具体例

消費財マーケティングの戦略立案は、新規顧客獲得・既存顧客育成・ブランドスイッチ対策の3つの軸で進めることが重要です。以下の表は、消費財マーケティングにおける戦略立案の施策内容とポイントを目的別にまとめています。

戦略区分施策内容具体例
新規顧客獲得1.潜在顧客層の特定とリーチサンプル広告や初回限定割引を展開
2.商品体験の機会創出ターゲティングメディアオファーでインセンティブを配信
既存顧客育成1.ロイヤリティプログラム導入購入金額に応じたポイント付与や限定商品の先行アクセス権を提供
2.限定コンテンツ提供アプリ内で商品の開発秘話や活用レシピ動画を配信
3.パーソナライズ クロスセル・アップセル過去の購買履歴に基づき、関連性の高い上位モデル商品や組み合わせ商品を提案
ブランドスイッチ対策1.競合からの乗り換え促進案乗り換え割引や自社製品の優位性を伝える比較コンテンツを配信
2.自社ブランドの優位性訴求競合の弱点を補う自社製品の強みをリテールメディア広告でアピール

これらの施策を効果的に組み合わせ、継続的に改善を図ることで、消費財マーケティングにおける競争優位と持続的な成長を実現できます。

まとめ:リテールメディアがもたらす「顧客理解」の未来

本記事では、リテールメディアを活用したデータドリブンな顧客理解と、その先進的なマーケティング戦略について解説しました。リテールメディアは、従来の顧客データでは捉えられなかった消費者の「購買のきっかけ」や「購買モーメント」を明らかにすることで、顧客理解を格段に深めることができます。

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