TOP対談:新しいカタリナの向かう先

カタリナマーケティングジャパンは2023年5月に米国本社から独立し、新たに掲げたビジョン「データという事実で 機能するマーケティングを実現する」のもと、変化するリテール業界やブランドマーケティングの最前線へ価値提供の展開を早めるべく、D Capital 株式会社を新たにパートナーに迎え、新たな経営体制を敷きました。
今回はカタリナマーケティングジャパンが設立25周年を迎えるにあたって、なぜカタリナとD Capital はともに歩むことを決めたのか、カタリナマーケティングジャパン代表取締役社長Sean Chu がD Capital 代表パートナー 仁木準氏をお迎えし、対談を通じてその理由をお届けします。



D Capital 株式会社について

D Capital は「DX×PE」をコンセプトに掲げ、第一線で活躍する投資プロフェッショナルと DX プロフェッショナルから構成される日本初のプライベート・エクイティ・ファンドです。日本の構造課題である産業の生産性向上に資するべく、日本企業の 99.7%を占める中小企業に対して、キャピタル、テクノロジー、ネットワークを提供することで企業の DX を強力に支援します。

D Capital 株式会社 代表パートナー 仁木 準

ゴールドマン・サックス証券戦略投資部、後に同マーチャント・バンキング部門にて投資業務に従事(直近は同部門の日本における共同責任者)。PEのみならず不動産・クレジットに至るまであらゆるアセットクラスへの知見・経験を有する。特に、太陽光発電所開発投資においては本邦随一の投資実績を誇る。

東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修了

カタリナマーケティングジャパン株式会社 代表取締役社長 Sean Chu

米国ニューヨーク州コーネル大学で工学学士号を取得。Appier社Chief Strategy Officer、Microsoft Japan執行役員CMO Director、Microsoft社オンラインサービスにおけるアジア統括執行役員、AXN Japan社代表取締役社長、Dow Jones社国際ディレクターなどを歴任。オンラインサービス、マーケティングビジネスに関しての幅広い経験を持つ。2019年、Chief Revenue and Marketing Officerとしてカタリナマーケティングジャパンに入社、2023年に代表取締役社長に就任。

「面白そうな会社」と聞いて会ってみたら「熱を持った会社」

Sean  仁木さん、今日はよろしくお願いします。我々の出会いから未来へのお話までをしていくわけですが、まずは私たちが最初にお会いしたときの印象を覚えていますか?

仁木  はい、まずは銀行さんが「面白い会社がある」とご紹介くださってお会いして、もちろん持っているアセットやポテンシャルは面白いと感じたんですが、まずはなにより熱意が強い会社だなという印象が強かったです。米国本社からカーブアウトして日本でこんなふうに成長していこうとしているのだ、というお話をいただいたのですが、たいへんに熱意を感じました。

カタリナの持っているアセットってすごくユニークで、マーケットにも受け入れられているし、財務的な指標なんかを見ても良さはわかるし、ポテンシャルの高い資源もある。たいへんに堀りがいがある。

そうなるとこんどは「じゃあそのアセットを持っている人たちってどういう人だろう」と思うわけです。どんなふうにアセットを発展させられるのか、その可能性がある人たちなのか。その点は最初にお会いしたときに熱を感じたことで、この会社は大丈夫そうだなと思いました。

Sean  あの最初のお打ち合わせは、カタリナの自己紹介のためにお時間をいただいたと思うのですが、私たちカタリナ側の参加者もいろんな思いが爆発した打ち合わせでした。本当はこんなことができる、こんな未来がある。時間は1時間しかないのに、持っていったスライドは60枚を超えていて、時間をオーバーしてしまった覚えがあります(笑)。カタリナのポテンシャルを伝えなければという思いが熱になって伝わったんでしょう。

仁木  そのおかげで私たちも「この人たちとやりたい」と思えましたね。

Sean  D Capitalの皆さんとはまず姿勢が一致したのが良かった。これから先のことを考えると理想的なパートナーでした。米国本社から借りていたものを日本独自につくっていく必要があるわけですが、そこに非常に心強い支援をいただけています。

リテールメディアプラットフォームのトップランナーとして

仁木  D Capitalとしても、カタリナの価値は大きいと思っています。花開くときの可能性が大きい会社、そんなふうに感じているところです。ポジションもユニークで、特に日本の市場におけるリテーラーとメーカーのちょうど間にいて、そこをつなぐことに大きな役割があるような存在。最近よく取り沙汰されるキーワードにリテールメディアというものがありますが、その領域においてもカタリナは新しいビジネスモデルの先駆者に、トップランナーになる可能性があるなと考えています。

Sean  そうですね。リテールメディアが先行している北米などと違い、日本においては地域に密着したリテーラーの皆様がたくさんいますから、リテールメディアの発展のためには各リテーラーをつなぐプラットフォームを構築する必要があると考えています。カタリナはその役割を担うことができる。

それから、リテールメディアが注目を集める理由のひとつに「いまのマーケティングには無駄が多い」という視点があると思います。その無駄が解消できれば、これまで浪費されていたマーケティングフィーが消費者に還元できるようになるかもしれない。より豊かな店頭体験ができるようになるかもしれない。いちばん無駄がなく、事実をベースにしたマーケティングを実施できるネットワークをつくりあげる、これは日本の消費のマーケットに対しても大きな貢献になるんじゃないかと思うわけです。

そうなるとこんどはこのネットワークそのものもスケールさせていかなければならないし、ネットワークのなかでさまざまなメーカー、ブランドが大小問わず施策を展開できるように仕組みを整えることも考えないといけなくなってくる。

仁木  単にビジネスとして考えれば、多くの額でマーケティング投資をしてくれる顧客とともに、巨額でなくても長期的な目線でマーケティング投資をしてくれる中小ブランドというのもありがたい存在ですね。

Sean  そのためには、現在の体制や仕組みをより進化させて、さまざまな人たちに利用してもらえるプラットフォームを目指す必要がありますね。リテールメディアプラットフォーム、というような。

社会にとってどんな価値があるプラットフォームであるのかを深く考える

仁木  リテールメディアプラットフォーム、これはキーワードとしてはわかりやすいところもありますね。カタリナはその領域でビジネスをしてきていて、社員の皆さんもそこに関わっている。実感が湧くところもあると思います。

ただ、意識が変わってくるところもあると思います。これまでであればある意味“広告施策を実施する”という意識でやれていたことが、プラットフォームを提供するとなると、その全体像を考えながら仕事をすることにもなるわけで、振る舞いは変わってくるように思います。

Sean  僕もすごく近い思いがあります。プラットフォームとして社会に、世の中にどう価値を生み出していくかという考え方は大事だと思っています。独立して自分たちの道を歩んでいくわけですから、社会にとって自分たちの価値とはどういうものなのかをしっかり考えること。

いまは25周年を迎えることができていますが、ではつぎの25年をどうつくっていくか。そういうことを考えると、日本の社会に対してどんな価値を提供していくのかが大事になってくる。僕はカタリナの最終的な価値は、市場のエコシステムを最適化できることだと考えています。消費を促すだけではなく、消費者にとってよい出会いになり、ブランドにとってもよりよい投資になる。その体験を演出するリテーラーは消費者からのロイヤリティを得ることができる。

そこにどんなふうに近づけるのか、それをみんなで考えていきたいですね。