リテールメディアのデータ分析で獲得可能になった新たな消費者インサイト

消費者のニーズが多様化し、情報過多の現代。従来のマスマーケティングだけでは、顧客一人ひとりの購買行動を深く理解し、最適なアプローチをすることが難しくなっています。経験や勘に頼った施策では、もはや消費者の心を掴むことはできません。今こそ、データに基づいた「次の一手」が求められています。
そこで注目されているのが、リテールメディアです。リテールメディアとは、小売業者が保有する膨大な実購買データと、実店舗やECサイトといった広告媒体を掛け合わせた新たなメディアのこと。具体的には、ECサイトの広告枠、アプリ内のプッシュ通知、店舗のデジタルサイネージ、さらにはレジ横の券面発券機などもリテールメディアに含まれます。
消費財メーカーにとって、リテールメディアはまさに「購買行動に最も近い場所」で顧客にリーチできる画期的な手段です。なぜなら、小売店は消費者が「買いたい」という具体的な意図を持って訪れる場所だからです。小売店と協力することで、商品の購買データと顧客の行動データを直接結びつけ、従来の施策では見えなかった顧客の「生の声」と「購買行動の事実」を明らかにすることができます。
まずは、リテールメディアを活用することでどういった消費者インサイトを発見し得るのか見てみましょう。
リテールメディアでここまで分かる! 獲得できる消費者インサイト
リテールメディアを活用することで、ブランドは以下のような具体的な消費者インサイトを獲得することができるようになります。
購買行動の“なぜ”を解き明かすデータ分析
- 誰が、何を、いつ、どこで、どれだけ買ったか?:
- ブランドの製品が「いつ」「誰に」「どれくらいの頻度で」購入されているのかを顧客IDと紐付けて正確に把握できます。例えば、競合製品から自社製品に乗り換えた顧客が、どんな経路を辿って購入に至ったのか、どのような商品と併せて買われているのかまでを深掘りできます。
- 併買分析でクロスセル機会を発見:
- 「〇〇(自社製品)を買う人は、なぜか△△(関連商品)も一緒に買っている」といった意外な組み合わせを発見できます。このインサイトを元に、商品の棚配置やオンラインでのレコメンデーション、セット販売などのクロスセル施策を最適化し、客単価アップに繋げることが可能です。
- 購買サイクルと離反予測:
- 特定の製品のリピート購入までの平均期間を把握したり、顧客が購入しなくなる離反の兆候を早期に捉えたりできます。これにより、適切なタイミングでインセンティブを配布したり、再購入を促すパーソナライズメッセージを送るなど、顧客の離反を防ぐための先手を打てます。
顧客を理解し、パーソナライズを加速するデータ活用
- 優良顧客・新規顧客の行動パターン:
- 自社にとっての「優良顧客」がどのようなデモグラフィック属性を持ち、どのような購買行動をしているのかを特定できます。同時に、新規顧客が最初に自社製品に触れるきっかけや、彼らが購入に至るまでの行動パターンも把握できるため、それぞれの顧客層に合わせた効果的なアプローチが可能になります。
- オンライン・オフライン連携で全体像を把握:
- 消費者はECサイトで商品を検索し、実店舗で購入する「ウェブルーミング」や、実店舗で商品を見てからECで購入する「ショールーミング」といった行動を取ることが珍しくありません。リテールメディアは、これらのオンラインとオフラインの行動データをつなぎ合わせることで、顧客の購買ジャーニー全体を可視化し、よりシームレスな顧客体験設計に役立ちます。
- 広告接触から購買までの貢献度:
- 自社が配信したECサイトの広告やアプリ内のプロモーションが、実際にどれだけ顧客の購買行動に貢献したかを測定できます。どの広告クリエイティブが、どのような顧客層に響き、最終的な売上につながったのかを正確に把握することで、広告費用の最適化と効果の最大化を図れます。
市場トレンドと競合分析で戦略を磨く
- 新商品の受容性と顧客の反応:
- 新製品を投入した際に、どの顧客層が最初に購入し、どのようなフィードバックが得られているかを素早く把握できます。これにより、新製品の改善点を迅速に見つけ出し、次の施策に活かすことができます。
- 競合ブランドとの比較:
- リテールメディア上で、自社ブランドの広告が競合と比べてどれだけ視認され、クリックされ、購入に繋がっているのかを比較できます。これにより、市場における自社のポジションを客観的に評価し、競合に打ち勝つための戦略を立案できます。
リテールメディアのデータ分析で獲得可能になった消費者インサイトの重要性

リテールメディアでは、実購買データを分析することで、顧客の購買パターンや嗜好、インサイトの発見につながります。これにより、精密なターゲティングやパーソナライズされた広告配信が可能です。ここでは、リテールメディアにおけるデータ分析の重要性についてあらためてまとめます。
リテールメディアで得られる消費者インサイトの真価
リテールメディアでは、リテーラーが直接収集する購買履歴をシングルソースで統合・分析し、顧客の真のニーズを抽出します。リテーラーが自社でしか保有していないファーストパーティデータを活用することで、パーソナライズされた施策の展開が実現可能です。これにより顧客インサイトの発見や、顧客ロイヤリティを強化したりするなど、ビジネスの成果を最大化することができます。
リテールメディアのデータ分析によって得られる価値
リテールメディアのデータ分析は、メーカーとリテーラー双方に新たな価値を創出します。従来、メーカーがアクセスできなかったリテーラーの実購買データを活用することで、消費者行動の本質的な理解につながります。さらに、顧客が広告に初めて接触してから実際に購買するまでの行動を、一つのデータソース(シングルソース)で追跡・分析することも可能です。実購買データと広告接触データを紐づけることで、広告がなければ発生しなかった売上の増分(インクリメンタル)を可視化できます。また、リテーラーも広告収入で新たな収入源を創出できるメリットがあります。
リテールメディアで活用される主なデータの種類

前述した貴重な消費者インサイトは、主に小売業者が保有する以下のデータから、いくつかの分析手法によって導き出されます。
実購買データ(ID-POSデータ)
顧客IDに紐付いた、いつ、どこで、何を、いくつ、いくらで購入したかという詳細な購入履歴。これが分析の基盤となります。
- 購入履歴:購入商品、数量、日時、価格などのデータ
- 購買頻度:商品別リピート購入の間隔、カテゴリ別購買頻度などのデータ
- 購買金額:買い物1回あたりの平均単価、月間総購入金額、割引利用履歴などのデータ
例えば、購入履歴データからは、過去の購入商品をもとに顧客の嗜好を把握し、関連商品の広告配信に活かせます。購入頻度データでは、購買の間隔や購入金額などから最適な広告配信のタイミングを計算できます。このように、実購買データはパーソナライズの精度やターゲティング、配信タイミングの最適化に力を発揮します。
行動データ
リテールメディアで活用される行動データの種類には以下が挙げられます。
- EC行動ログ:検索キーワード、商品ページの滞在時間・閲覧履歴、カート追加などのデータ
- アプリ行動データ:アプリ内の機能をどれくらい使ったかを示す利用頻度プッシュ通知への反応などのデータ
- 店舗来店データ:商品棚前の滞留時間、特定コーナーの利用時間などのデータ
例えば、EC行動ログやアプリ行動データなどから長時間閲覧した商品は、顧客の興味関心度が高いと考えられる商品です。この場合は、閲覧してから短時間のうちに、限定クーポンの配信や未購入商品の画像や価格を記載したメッセージ配信などの施策を行うことで購入を促せます。
また、カメラによる来店客数や動線、属性、ビーコン・GPSによる移動経路などから、日付・時間帯別の来店客数や来店率を分析し、売上やスタッフ配置の最適化に役立てることもできます。行動データとリアルタイム分析を連動させることで、消費者が反応しやすいタイミングに最適な広告配信が可能になります。
消費者インサイトを発見する、データの分析手法

リテールメディアで得られるデータから、消費者インサイトを発見する際に活用できる分析手法をご紹介します。
代表的な分析手法
- RFM分析:
- 「最終購買日(Recency)」「購買頻度(Frequency)」「購買金額(Monetary)」の3つの指標で顧客をセグメントし、優良顧客や休眠顧客を特定します。
- バスケット分析:
- 同時に購入される商品の組み合わせを分析し、併売パターンやクロスセル機会を発見します。
- アトリビューション分析:
- 顧客が購買に至るまでに接触した複数の広告やタッチポイントの中で、どの媒体が最終購買に最も貢献したかを評価します。これにより、広告費の最適な配分を決定できます。
- A/Bテスト:
- 異なる広告クリエイティブやターゲット設定、プロモーション内容などを複数のグループに分けて配信し、どちらがより効果的だったかを比較検証します。
リテールメディアの分析データがもたらすビジネス価値

リテールメディアの分析データは、顧客体験の向上や投資対効果の可視化、売上増加などさまざまな価値をもたらします。ここでは、リテールメディアの分析データがもたらすビジネス価値をまとめます。
ROMIの計測
ROMI(マーケティング投資対効果)は、『(売上−マーケティングコスト)÷マーケティングコスト×100』で計算できる指標で、マーケティングに投入した費用が売上や利益にどれくらい貢献したかを定量的に測定するために用いられます。
リテールメディアにおけるROMIは、実際の実購買データを基にした効果測定が可能です。従来、マーケティング活動は成果が見えにくい領域とされていたものの、ROMIの活用によって施策ごとの投資回収率を数値で評価し、戦略的な意思決定や最適な予算配分が可能となります。
しかし、リテールメディアでは広告配信対象者と実購買データを紐づけし、認知から購買までのファネルを一元管理できます。そのため、他のメディアを使用したマーケティング施策よりもROMIの計測がしやすく、長い期間を通じて顧客の購買を計測できます。
インクリメンタルの計測
リテールメディアの分析データを用いることにより、インクリメンタルの計測が可能となります。インクリメンタルとは、広告効果や影響を測定する際に、この広告がなかった場合に比べてどれくらい増分成果が得られたかを評価する考え方です。リテールメディアでは、リテーラーが持つ膨大なデータと広告接触データを連携させることができます。これによって、広告が消費者の購売行動をどれだけ促したかを把握できます。
これにより、インクリメンタルの効果が低い広告を排除し、効果が高い広告に注力するなど、戦略的な広告活用が実現可能です。
まとめ:リテールメディアは消費者インサイトの宝庫

消費者の行動が複雑化し、データ活用の重要性が高まる現代において、リテールメディアは消費財メーカーにとって、顧客理解を深め、売上を向上させるための不可欠な選択肢となりつつあります。
小売店が持つ購買行動に最も近いデータと、それを分析する高度な手法を組み合わせることで、貴社はこれまで見えなかった顧客の「なぜ?」を解き明かし、よりパーソナルで効果的なマーケティング施策を展開できるようになります。
カタリナマーケティングジャパンは、全国約12,000店舗以上、13兆円、1,4億IDの購買データを基にした高度なターゲティング広告や、店頭と連動したオファー設計・配信、TVCMやデジタル広告の購買効果検証までワンストップで支援しています。 市場性のある大規模データをシングルソースで分析することにより効果の高いマーケティング施策の実施が可能です 。リテールメディアの活用などの基本戦略は 商品カテゴリに合わせてご提案できますので、ぜひこの機会にお問い合わせください。